愛に満ちた本
2008-11-13


今日、
一冊の本が届いた。

山田幸枝 著
「ハーブスと私」。

ハーブスとは、
名古屋の人なら(いや、名古屋の人ならず)知っている
あの大きなおいしいケーキで有名なお店「HARBS」だ。

著者 山田幸枝さんは、
このハーブスを小さな喫茶店から夫妻で成長させ、
実業家として一時代を築き上げた人だ。

一気に読んでしまった。
そして、静かに流れる涙が、止まらない。



私が幸枝さんと出会ったのは、
10年近く前だったと記憶している。
八竜のアトリエで開き始めた私の講座に、
お友だちに誘われて参加された。
気転が利き、知的で、よく笑う素敵な女性だった。

今思えば、あのころの幸枝さんは、
人生で最もつらい時期を過ごしていたのだ。

夫婦の絆が崩れ去り、
築き上げた会社の経営から突然身を引くことになった。
ようするにビジネスパートナーと
プライベートパートナーを一気に失い、
社会において立つ場所も失い、
複数の裁判で身も心もボロボロだった。
当時、そのことに話しが及ぶと、
笑い上戸の彼女が一転して形相を変え、
恨み節を語り始めた。
お酒に気をまぎらせる日々だったようだ。
彼女を連れて来たお友だちは、
「お酒から少しでも離すために連れ出した」と言っていた。

争っている裁判の膨大な資料を見せてもらったこともある。
もともと明るく無邪気だったであろう彼女が、
人生の貴重な時間に恨み続ける姿を私は理不尽に思った。
そして、早くそんなつらい過去を忘れて、
明日へ向かって歩き始めたらいいのに、
とひとごとゆえに思っていた。

あれから数年。
会うこともないまま過ぎ、
ときどきどうしているかなあと気になっていた。

そして、今日届いた本。

驚いた。
あの、険しい顔をしていた彼女は、もういない。

この本に記された言葉には、愛が満ちている。
別れた元夫に、
夫妻で小さな喫茶店から始めた懐かしい日々に、
ハーブスで苦楽を分かち合った社員の人々に、
出会った人たちすべてに。
そして、再び歩き出そうとする彼女の姿が清々しい。

読み進んでいるときから、
今、ここ、この瞬間が、
かけがえのない愛しいものなんだと、
痛いほど気づかせてくれた。

これは、どん底まで突き落とされ、
生死の境目も判別できないほど苦しんだ末の、
幸枝さんにしか書けない本だ。

そして、単なる私生活の回顧ではなく、
お店をやっていこうとする人には、
ヒントになることがいっぱい詰まっている。



全国書店、インターネットでも買えます。
夢を追いかける女性へ。。。ぜひ。

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